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傷病手当金と障害年金は両方もらえる?計算は÷360だけ

傷病手当金と障害年金は両取りできるかを解説する記事のアイキャッチ画像。年金額を360で割って日額を比べること、受け取れるのは高いほうだけであること、さかのぼると返納が生じることを示している 健康資産
みー
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傷病手当金と障害年金、両方もらえたら心強いよね!

残念ながら、同じ病気では両取りできません。

ただ、考え方そのものはとても単純です。

先に結論をお伝えします。

受け取れるのは、2つのうち日額が高いほうだけです。

年金の日額は「年金額 ÷ 360」で出します。

自分で計算するのは、この割り算ひとつだけです。

こんにちは、FPのよ~ちゃんです。

この調整には、知らないと本当に困る落とし穴があります。

あとから「払いすぎたので返してください」と言われることがある、というものです。

この記事でわかること
  • 同じ病気で両取りできない理由(健康保険法108条)
  • 年金額 ÷ 360 で自分の金額がわかる計算
  • 等級・子どもの人数別に、いくら出るかの早見表
  • あとから返金を求められるのはどんなときか
  • 調整されないケースもあること

読み終えるころには、自分の場合いくら受け取れるのかを、電卓ひとつで出せるようになります。

同じ病気なら、傷病手当金と障害年金は両方もらえません

健康保険法第108条で、傷病手当金と障害年金は調整されると決められています。

この仕組みを併給調整(へいきゅうちょうせい)といいます。

対象になるのは、同じ病気やけが(およびそれによって起きた病気)です。

別の病気なら、この調整はかかりません。

減るのは傷病手当金のほうです

ここは誤解が多いところなので、先にはっきりさせます。

調整で止まるのは傷病手当金であって、障害年金は減りません。

年金はそのまま出て、傷病手当金のほうが引っ込む形です。

だから「年金を請求すると損をするのでは」と心配する必要はありません。

調整の入口は「障害厚生年金」

もうひとつ大事な点があります。

調整の対象になるのは、厚生年金から出る障害厚生年金です。

同じ病気で障害基礎年金もあわせて受け取るときは、2つを足した額で比べます。

逆に、障害基礎年金しか出ない場合は、この調整はかかりません。

初診日が国民年金に加入していた時期だった人などが、これにあたります。

覚える計算はひとつだけ|年金額 ÷ 360

やることは3ステップだけです。

この計算だけ覚えれば足ります

  1. 年金額 ÷ 360 = 年金の日額
  2. 傷病手当金の日額と比べる
  3. 高いほうの金額を受け取る

なぜ360で割るのか

1年は365日ですが、この計算では360で割ります。

これは健康保険法108条とその省令で決められた計算方法です。

1か月を30日として12か月分、つまり30×12で360、と考えるとわかりやすいと思います。

年金額が180万円なら、180万円 ÷ 360 で日額5,000円になります。

例で見ると、一瞬で決まります

協会けんぽの資料に、わかりやすい例が2つ載っていました。

ケース年金の日額結果
年金180万円・傷病手当金の日額4,000円5,000円傷病手当金はゼロ
年金126万円・傷病手当金の日額4,000円3,500円差額500円だけ出る

上は年金のほうが多いので、傷病手当金は出ません。

下は傷病手当金のほうが多いので、その差額だけが出ます。

どちらの場合も、受け取る合計は日額が高いほうの金額です。

傷病手当金と障害年金の調整を示す対比図。年金の日額が多いときは傷病手当金がゼロになり、傷病手当金の日額が多いときは差額だけが支給される。受け取れるのは日額が高いほうだけであることを示している

比べる相手の金額は、自分で計算しなくて大丈夫

すでに受け取っている人は、支給決定通知書で確認できます。

自分で電卓をたたくのは、年金の側だけです。

計算式も一応書いておくと、標準報酬月額の30分の1に、3分の2をかけた額になります。

標準報酬月額とは、毎月の給与をランク分けした額のことです。

正確には、支給が始まる前12か月の標準報酬月額を平均した額を使います。

給与がおおむね月30万円のランクなら、30万円 ÷ 30 × 2/3 で日額6,667円です。

等級・家族構成別|傷病手当金は実際いくら出るのか

年金の日額が6,667円を下回るうちは、合計は6,667円のまま変わりません。

ここからは、この2本の記事の数字をつなげて計算してみます。

傷病手当金の日額は6,667円(標準報酬月額30万円)とします。

年金の側は、ボーナスも含めた平均月収が30万円の会社員が障害厚生年金を受け取るケースです。

ケース年金の日額傷病手当金の日額
3級(最低保障額)1,765円4,902円
2級・子なし3,724円2,943円
2級・子3人5,304円1,363円
1級・子3人6,235円432円
1級・子3人+配偶者6,912円0円

※令和8年度の金額をもとにした試算です。年金額は毎年度改定されます。
※厚生年金の加入期間は300月(25年)で計算しています(300月未満は300月とみなす決まりのため)。
※配偶者の加給年金243,800円は、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合の額です。配偶者が加入期間20年以上の老齢厚生年金を受け取る権利を得たときや、障害年金を受け取る間は支給停止されます。
※3級には、障害基礎年金・子の加算・配偶者の加給年金はつきません。
※3級は、平均月収30万円・300月では報酬比例の額が最低保障額を下回るため、最低保障額635,500円で計算しています。

上の4つは、足すとどれも傷病手当金の日額6,667円になります。

年金が増えても、合計は増えていません。

傷病手当金が、その分だけ引っ込んでいるからです。

いちばん下だけは年金が6,667円を超えたので、傷病手当金はゼロになりました。

このときの合計は6,912円で、傷病手当金の日額より多くなります。

つまり、こう考えれば足ります

難しく考える必要はありません。

受け取れるのは、年金の日額と傷病手当金の日額の、高いほうだけ。

2つを足し算するのではなく、水位の高いほうにグラスの水を合わせるイメージです。

年金の水位が傷病手当金より低いうちは、増えた分だけ傷病手当金の水を抜いて、高さを保ちます。

なお給与の一部が出ている場合や、出産手当金を受けている場合は、別の調整も重なります。

最終的な金額は、加入している健康保険にご確認ください。

いちばん怖いのは、傷病手当金の「あとから返してください」

障害年金がさかのぼって決まると、受け取った傷病手当金を返すことがあります。

その鍵になるのが、障害認定日という基準日です。

障害認定日とは、原則として初診日から1年6か月たった日のことです。

そこまでさかのぼって受給が決まると、その期間は年金と傷病手当金が重なります。

すると、すでに受け取った傷病手当金が返納の対象になります。

もらったお金を返すことになります

障害年金がさかのぼって決まると、重なった期間の傷病手当金は返納の対象です。使ってしまったあとに請求されるので、まとまった額だと生活に響きます。

障害年金がさかのぼって決まったときに傷病手当金の返納が生じる仕組みを示す時系列図。傷病手当金を受け取っていた期間と、あとから決まった障害年金の対象期間が重なった部分が返納の対象になることを示している

保険者側の確認漏れも、実際に起きています

これは制度上の理屈だけの話ではありません。

会計検査院の平成27年度(2015年度)決算検査報告に、実例が載っていました。

協会けんぽの5支部で併給調整の確認が十分でなく、26人・約1,676万円が過大に支給されていた、というものです。

原因は、年金の情報を受け取っていたのに、調整が必要かどうかの確認が足りなかったこととされています。

保険者(加入している健康保険のことです)も確認は行っていますが、件数が多く、見落としが起きることもあります。

つまり任せきりにしていると、あとから請求される側になりかねない、ということです。

だから、決まったら自分から連絡する

対策はとても単純です。

障害年金の受給が決まったら、加入している健康保険にすぐ連絡してください。

正直に書くと、私は自分の健康保険が協会けんぽなのか健康保険組合なのか、すぐには答えられませんでした。

加入先の名称は、マイナポータルで自分の資格情報を見るとわかります。

わからなければ、勤務先の総務に聞くのがいちばん早い方法です。

早く伝えるほど、返す額は小さくて済みます。

調整されない場合もあります

すべてのケースで調整されるわけではありません。

  • 別の病気やけがによるものなら、調整されません
  • 障害基礎年金だけのときは、健康保険法108条の対象になりません

ひとつめは実務でもよく問題になるところです。

同じ病気か、関連する病気かどうかは、最終的に保険者が判断します。

自己判断で「別の病気だから大丈夫」と決めないでください。

なお「まだ請求していないから関係ない」とは言えません。

請求前の期間でも、あとからさかのぼって年金が決まれば、その期間は調整の対象になります。

それでも、障害年金は早く請求したほうがいい

「調整されるなら、あとで請求してもいいのでは」と思うかもしれません。

そうではありません。

理由は3つあります。

傷病手当金には終わりがあります

傷病手当金は、支給が始まった日から通算1年6か月で終わります。

一方、障害年金には支給期間の上限がありません。

ただし多くは1〜5年ごとに診断書を出す更新があり、障害が軽くなれば支給は止まります。

それでも、傷病手当金が終わったあとを支えるのは障害年金だけです。

事後重症の請求だと、遅れた分は取り戻せません

障害認定日の時点で等級に届いていなかった場合、事後重症という請求になります。

このときは、受け取れるのが請求日の翌月分からです。

つまり請求を先延ばしにした分は、後ろにずれるだけで取り戻せません。

なお障害認定日にさかのぼる請求でも、時効で消えるのは5年より前の分です。

調整されても、合計は減りません

そして最初にお伝えしたとおり、受け取れるのは日額が高いほうです。

障害年金を請求したせいで合計が減ることはありません。

早く請求して損をする場面は、基本的にないということです。

退職後は、老齢年金とも同じ調整をします

退職後に老齢年金を受け取れるようになった場合も、まったく同じ計算で調整されます。

退職後も傷病手当金を受け取り続けている人が対象です。

老齢年金の額を360で割って、傷病手当金の日額と比べるだけです。

老齢年金のほうが多ければ傷病手当金は止まり、少なければ差額が出ます。

よくある質問

障害年金を請求すると、傷病手当金が減って損しませんか?

損はしません。

受け取れる合計は、年金の日額と傷病手当金の日額の高いほうになります。

年金が少ないうちは差額が出るので、合計は変わりません。

そして傷病手当金には1年6か月の上限があるので、長い目で見れば請求したほうが有利です。

両方受け取ってしまったら、どうなりますか?

重なった期間の傷病手当金が、返納の対象になります。

気づいた時点で、加入している健康保険に連絡してください。

協会けんぽは日本年金機構から年金の情報提供を受けていますが、自分から伝えたほうが早く済みます。

別の病気で障害年金をもらっている場合は?

調整されません。

健康保険法108条の対象は、同じ病気やけが(およびそれによって起きた病気)です。

ただし関連する病気かどうかの判断は保険者が行うので、自己判断は避けてください。

まとめ:電卓を1回たたけば、答えは出ます

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 同じ病気なら、傷病手当金と障害年金は両取りできない(健康保険法108条)
  • 止まるのは傷病手当金のほう。障害年金は減らない
  • 年金額 ÷ 360 で日額を出し、傷病手当金の日額と比べるだけ
  • 受け取れるのは、2つのうち日額が高いほう
  • 調整の入口は障害厚生年金。障害基礎年金だけなら対象外
  • さかのぼって年金が決まると、受け取った傷病手当金を返すことがある
  • 退職後の老齢年金とも、まったく同じ計算で調整される

今日できる最初の一歩は、自分がどの健康保険に入っているかを確かめることです。

確認先は、マイナポータルの資格情報か、勤務先の総務です。

障害年金が決まったときに、まず連絡する先がそこになります。

働けなくなったときに使える給付は、ほかにもあります。

※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく概算です。実際の調整額や返納の要否は、加入している健康保険と年金の記録によって決まります。ご自身のケースは、健康保険の窓口または年金事務所でご確認ください。

執筆:よ~ちゃん(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/最終更新日:2026年8月1日

参考資料

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