
病気で長く休んでも、給料の3分の2はもらえるんでしょ? なら安心かな😊
その「3分の2」、振り込まれたあとに減ります。
先に結論をお伝えします。
傷病手当金は額面の3分の2ですが、そこから社会保険料が引かれるので、手元に残るのは額面の約5割です。
月給30万円の人なら、振り込まれるのは月約20万円。
そこから約4万3千円を払うので、自由に使えるのは約15万7千円です。
申し遅れました。
こんにちは、FPのよ~ちゃんです。
私自身は病気で長く会社を休んだ経験がなく、この制度を知ったのも、会社の説明ではなく知り合いからでした。
- 傷病手当金がもらえる4つの条件と、待期3日間の数え方
- 標準報酬月額別「1日あたり・1か月あたり」の早見表
- 3分の2から引かれるもの(産休・育休との決定的な違い)
- 「通算1年6か月」の正しい数え方と、退職後ももらう条件
- 申請でやりがちなNG3つ
読み終えるころには、「自分の場合、月いくら入って、いくら足りないのか」が数字で見えます。
傷病手当金とは?4つの条件を全部みたした人だけがもらえる
傷病手当金とは、病気やケガで働けない間の生活を支えるために、健康保険から支給されるお金です。
会社員や公務員など、健康保険に入っている本人だけが対象です。
なお、自営業やフリーランスの人が入る国民健康保険には、傷病手当金は原則としてありません。
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、次の4つを全部みたした場合にかぎって対象になる、としています。
条件①②:業務外の病気やケガで、働けない状態であること
まず、原因が仕事や通勤ではないことが条件です。
仕事中や通勤中のケガは、健康保険ではなく労災保険が使われます。
美容整形など、病気とみなされない治療も対象外です。
そして「働けない」の判定は、自己申告ではありません。
医師の意見と、その人の仕事の内容をあわせて判断されます。
デスクワークの人と、重い荷物を運ぶ人とでは、同じ病名でも結論が変わることがあるわけです。
心の病気も、業務が原因でなければ対象になります。
条件③:連続3日休んで、4日目から(最初の3日は1円も出ません)
ここが最初のつまずきポイントです。
支給がはじまるのは、連続して3日間休んだあとの、4日目からです。

この3日間を「待期」と呼びます。
そして待期の3日間には、傷病手当金は出ません。

じゃあ「月・火休んで、水は無理して出社、木からまた休み」なら4日休んだことになる?🤔
なりません。
協会けんぽは、連続2日休んだあと3日目に仕事をした場合、待期3日間は成立しないと明記しています。
必要なのは、途切れない3日です。
いっぽうで、待期には有給休暇や土日・祝日も含まれます。
給与が出ていたかどうかは関係ありません。
金曜に発症して土日をはさめば、その3日で待期が完成する、ということです。
条件④:その期間に給与が出ていないこと
生活を支えるための制度なので、給与が出ている間は支給されません。
ただし、給与が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。
有給休暇を使い切ってから傷病手当金へ、という順番になる人が多いのは、このためです。

ちなみに私、FPの試験でこの4条件を暗記したのに、いま書きながら公式サイトで全部確認し直しました😅
傷病手当金がどこに位置づけられる制度なのかは、公的保険の全体像で整理しています。
傷病手当金はいくら?標準報酬月額別の早見表【FP試算】
結論から言うと、1日あたりの支給額は「直近12か月の給与の平均を30で割って、その3分の2」です。
標準報酬月額が30万円なら、1日6,667円、30日で200,010円になります。
計算式は「12か月の平均÷30日×3分の2」
協会けんぽの正式な計算式は、次のとおりです。
- 支給開始日以前の、続いた12か月間の標準報酬月額を平均する
- その額を30で割る(10円未満は四捨五入)
- さらに3分の2をかける(1円未満は四捨五入)
標準報酬月額とは、毎月の給与を等級ごとの金額にあてはめた「保険料を計算するための給与」のことです。
給与明細の健康保険料の元になっている数字だと思ってください。
残業代や通勤手当も含まれるので、基本給よりは少し高くなるのが普通です。
この記事では、標準報酬月額を30万円としてモデル計算をしています。
月給がちょうど30万円でも、手当が乗って1つ上の等級になっていることがあります。
自分の等級は、給与明細の健康保険料の欄から確かめてください。
標準報酬月額別の早見表
協会けんぽの端数処理どおりに、私が1件ずつ計算した表です。
| 標準報酬月額 | 1日あたり | 1か月(30日) |
|---|---|---|
| 20万円 | 4,447円 | 133,410円 |
| 26万円 | 5,780円 | 173,400円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 |
| 38万円 | 8,447円 | 253,410円 |
| 41万円 | 9,113円 | 273,390円 |
自分の欄がなければ、標準報酬月額を30で割って0.667をかけると近い数字が出ます。
なお、この計算に賞与は入りません。
ボーナスの分は、休んでいる間まるごと消えます。
年収に占めるボーナスの割合が大きい人ほど、実感としての落ち込みは大きくなります。
健康保険に入って1年たっていない人は「32万円」で計算されることも
健康保険の加入期間が12か月に満たない人は、平均を取る12か月分がありません。
その場合は、次の2つのうち低いほうが使われます。
- 支給開始日の属する月以前の、続いた各月の標準報酬月額の平均
- 全加入者の標準報酬月額の平均額(支給開始日が2025年4月1日以降なら32万円)
つまり、標準報酬月額50万円の人が加入半年で倒れても、32万円で計算されます。
1日あたり7,113円、30日で213,390円です。
給与が高い人ほど、加入して間もない時期は落差が大きくなる仕組みです。
なお、この32万円という平均額は毎年度見直されます。
豆知識:待期の「1日目」は、その日の勤務中に決まることがある
待期の3日間は、休み始めた日から数えます。ただし、勤務時間中に仕事と関係のない病気やケガで働けなくなった日は、その日が待期の1日目になります。
【落とし穴】3分の2のはずが、手元に残るのは約15万7千円
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
振り込まれた20万円は、まるごと使えるお金ではありません。
傷病手当金からも社会保険料は引かれる(産休・育休との決定的な違い)
産前産後休業と育児休業の期間は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
日本年金機構が制度として用意している免除は、この2つだけです。
病気やケガでの休職は、免除の対象に入っていません。
給与がゼロでも、保険料の負担はそのまま続きます。
標準報酬月額30万円の人(40歳未満・東京都・協会けんぽ)で計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 傷病手当金(30日分) | 200,010円 |
| 健康保険料(本人負担) | −14,775円 |
| 子ども・子育て支援金(本人負担) | −345円 |
| 厚生年金保険料(本人負担) | −27,450円 |
| 手元に残る | 157,440円 |
保険料は、2026年度(令和8年度)の協会けんぽ東京支部の保険料額表そのままの数字です。
子ども・子育て支援金は、2026年4月から新しく加わった負担です。
協会けんぽの保険料率は毎年3月分(4月納付分)から見直されるので、この金額も年度が変われば動きます。
157,440円は、標準報酬月額30万円の約52%です。

40歳から64歳の人は介護保険料が加わるので、引かれる額は45,000円ちょうど、残りは155,010円です。

えっ、休んでるのに保険料を払うの…?😨
払います。
給与から天引きできないので、会社へ振り込む、復職後の給与から引かれるなど、やり方は会社によって違います。
休職に入る前に総務へ確認しておくと安心です。
ここは誤解しないでください
- 保険料が値上がりするわけではありません。ふだんの給与からも同じ額が引かれています
- 危ないのは「3分の2だから20万円は使える」と家計を組んでしまうこと
- 実際に使えるのは、そこから4万円ほど少ない金額です
住民税も、去年の所得のまま届く
もうひとつ、忘れられがちな出費があります。
住民税は、前の年の所得をもとに計算されます。
収入が減った今年の状況は、金額に反映されません。
さらに、給与天引き(特別徴収)が続けられなくなると、自分で納める形に切り替わることがあります。
その場合、休職中に納付書が届きます。
1年休んだら、働き続けた場合より約119万円少ない
私の同僚が、精神的な病気で1年ほど休職していました。
ご家族がいましたが、奥さんも働いていたので、なんとか生活できていたそうです。
この話を知って私が考えたのは、「もし片働きだったら、どうなっていたんだろう」ということでした。
そこで、さきほどの標準報酬月額30万円のモデルで1年分を計算してみます。
- 傷病手当金:6,667円×362日(365日から待期3日を引く)=2,413,454円
- 社会保険料:42,570円×12か月=510,840円
- 手元に残る:約190万円
いっぽう、働き続けていた場合はこうです。
- 300,000円−42,570円=257,430円/月
- 12か月で約309万円
差は約119万円、月にならすと約10万円です。
※どちらも健康保険料・厚生年金保険料だけを引いた金額で比べています(所得税・住民税・雇用保険料は引く前)。
傷病手当金は非課税なので、税金まで含めるとこの差はもう少し小さくなります。
なお、休職中も前の年の所得にかかる住民税の支払いは続きます(働き続けた場合も同じなので、上の差そのものは変わりません)。
ボーナスがある人は、ここにさらに賞与分がまるごと乗る計算です。
共働きか、この119万円ぶんの貯金があるか。
同僚の家庭が持ちこたえられた理由は、たぶんそこでした。
いつまでもらえる?2022年に「通算1年6か月」へ変わった
先に答えです。
同じ病気やケガについて、支給が始まった日から通算して1年6か月です。
この「通算」が入ったのは、2022年(令和4年)1月1日の改正でした。
途中で復職しても、休んだ日だけが数えられる
改正前は、支給開始から1年6か月たてば、途中で復職していても打ち切りでした。
いまは、働いて支給されなかった期間は数に入りません。
その分を後ろへ繰り越して受け取れます。
厚生労働省は、支給開始日から1年6か月を超えても繰り越して支給できる、と説明しています。
体調が戻ったら少し働き、また悪くなったら休む。
そういう波のある病気にとっては、大きな改善でした。
退職後ももらえる「継続給付」の2つの条件
退職しても、次の2つをみたせば残りの期間を受け取れます。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が続けて1年以上あること
- 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
ここで多いつまずきが、退職日に出勤してしまうことです。
あいさつのつもりで出社すると、「働ける状態だった」と判断されます。
協会けんぽは、退職日に出勤したときは継続給付の条件をみたさない、と明記しています。
なお、1年以上の期間に、任意継続や共済組合、国民健康保険に入っていた期間は含まれません。
退職日の出勤で、権利が消えます
- 最後のあいさつ回りや、私物の引き取りのための出社でも危険です
- 退職日は出勤せず、荷物は郵送や代理で受け取る段取りにしてください
任意継続に切り替えても、新しい傷病手当金は出ない
退職後の健康保険で「任意継続」を選ぶ人は多いと思います。
ただし、任意継続の期間中に発生した病気やケガについては、傷病手当金は支給されません。
在職中から続いている分(継続給付)だけが、そのまま受け取れます。
退職後の健康保険をどう選ぶかは、この点も含めて考えたいところです。
傷病手当金でやりがちなNG3つ
制度を知っていても、順番を間違えると受け取りそこねます。
会社から説明を受けたことは、私は一度もありません。
知らないまま損をする人がいてもおかしくない、というのが正直な感想です。
会社が教えてくれる前提で待たない、というのが最初の防御です。
❌失業給付と一緒にもらおうとする → ⭕受給期間の延長を申請する
雇用保険の失業給付(基本手当)は、「働ける状態で、仕事を探している人」がもらえるお金です。
病気で働けない人は、そもそも条件をみたしません。
つまり、傷病手当金と同時には受け取れません。
ここで使うのが、受給期間の延長です。
病気やケガで引き続き30日以上働けないときは、その日数だけ受給期間を延ばせます。
延長できるのは最長3年間です。
治ってから失業給付を受け取る、という順番にできるわけです。
❌障害年金と両方まるごともらえると思う → ⭕差額だけと知っておく
同じ病気で障害厚生年金を受けられるようになると、傷病手当金は原則として止まります。
ただし、まるごとゼロではありません。
傷病手当金の日額のほうが多いときは、その差額が支給されます。
年金の日額は、年金額を360で割った数字です。
老齢年金についても同じような調整があります。
退職後の継続給付を受けている人が老齢厚生年金などを受け取り始めると、傷病手当金は止まります。
こちらも、年金額の360分の1が傷病手当金の日額を下回れば差額が出る形です。
出産手当金と重なる期間は、出産手当金が優先されます。
❌落ち着いてから申請しようとする → ⭕時効は2年、1か月ごとに出す
傷病手当金の申請には期限があります。
働けなかった日ごとに、その翌日から2年です。
体調が戻ってからまとめて出そうとすると、古い日付から順に消えていきます。
協会けんぽが勧めているのは、給与の締切日ごとに1か月単位で申請するやり方です。
申請書には、本人・会社・医師の3者が記入します。
医師の証明をもらう手間を考えても、まとめずに小分けにするほうが確実です。
まず動くのはここ
- 休み始めたら、まず会社の総務に「傷病手当金の申請書を出したい」と伝える
- 診察のときに、医師へ「傷病手当金の証明をお願いします」と先に言っておく
- 申請は1か月ごと。まとめない
よくある質問
うつ病でも傷病手当金はもらえますか?
もらえます。
傷病手当金の対象は、業務が原因ではない病気やケガです。
体の病気か心の病気かは問われません。
医師が「いまの仕事はできない状態」と認め、ほかの条件もみたせば対象になります。
ただし、長時間労働やハラスメントなど業務が原因と考えられる場合は、労災保険の対象になる可能性があります。
判断に迷うときは、労働基準監督署にも相談してみてください。
パートやアルバイトでももらえますか?
勤務先の健康保険に入っていれば、もらえます。
傷病手当金の対象は「健康保険の被保険者本人」なので、正社員かどうかは問われません。
いっぽう、家族の扶養に入っている人は対象外です。
見分け方はかんたんで、給与明細から健康保険料が引かれていれば、あなたは被保険者です。
傷病手当金に税金はかかりますか?
かかりません。
健康保険法第62条が、保険給付として受け取った金品には税金などを課すことができないと定めています。
そのため、所得税も、翌年の住民税もかかりません。
ただし、これは傷病手当金そのものの話です。
前の年の所得にかかる住民税と、健康保険・厚生年金の保険料は、別に払うことになります。
申請してから、いつ振り込まれますか?
協会けんぽは、審査の結果支払えると判断されれば、受付から10営業日以内に支払うとしています。
ただし、申請は1か月分がそろってからになります。
待期の3日、1か月分の締め、そして審査の10営業日。
これを重ねると、休み始めてから最初の入金までは1か月半から2か月ほどかかる計算です。
この空白の期間を埋めるのは、貯金しかありません。
生活費の3か月分を先に確保しておくと、この待ち時間を無傷で越えられます。
まとめ:傷病手当金は「額面の半分」で計画する
最後に、この記事の要点を整理します。
- もらえるのは4条件を全部みたした人だけ。連続3日の待期が必要で、その3日は無支給
- 金額は「直近12か月の平均÷30日×3分の2」。標準報酬月額30万円なら1日6,667円
- そこから社会保険料が引かれ、手元に残るのは月約15万7千円(額面の約52%)
- 産休・育休と違い、病気の休職では保険料は免除されない
- 期間は通算1年6か月。復職した分は繰り越せる
- 退職日に出勤すると、退職後の継続給付が受けられなくなる
- 申請の時効は、働けなかった日ごとに2年
今日できる最初の一歩は、給与明細を1枚出して、「健康保険料」と「厚生年金保険料」を足すことです。
明細に「子ども・子育て支援金」の欄があれば、それも足してください。
その合計額が、明日から働けなくなっても、毎月出ていき続けるお金です。
入ってくる額が3分の2に減っても、この欄の数字は1円も変わりません。
そこを知っているかどうかで、休職の初月に慌てるかどうかが分かれます。
医療費そのものの負担が心配な方は、こちらもあわせてどうぞ。
※試算は2026年度(令和8年度)の協会けんぽ東京支部の保険料額表をもとにした概算です。保険料率は加入している健康保険や都道府県によって異なります。実際の支給額は、加入先の健康保険にご確認ください。
執筆:よ~ちゃん(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)/最終更新日:2026年7月25日







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